タイ会計・監査の基本とタイ進出企業が抱える課題

会計

記事更新日:2024/07/11

タイ会計・監査の基本とタイ進出企業が抱える課題

こんにちは、マルチブック編集部です。

タイは、多くの日系企業にとって重要なグローバルビジネスの拠点となっています。しかし、タイの税務・会計制度は複雑であり、特に日本からの新規進出企業や駐在員にとっては挑戦が多いことでしょう。

今回は、タイでの会計・監査について詳しく解説します。タイ国内の企業は、タイの会計基準に基づいて財務諸表を作成し、すべての企業が公認会計士(CPA)による監査を受ける必要があります。さらに、会計経理担当者には特定の資格が要求され、会計帳簿の保存期間や財務諸表の提出など、タイ特有の法的要件が存在します。

タイに進出する際には、これらの基本的なポイントを押さえておくことが重要です。駐在員や本社管理部の方々にとって、タイの会計・監査制度を理解することは、円滑な事業運営に欠かせません。

ここからは、具体的なポイントについて見ていきましょう。

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タイの会計・監査制度

まずは、タイの会計基準と監査制度について詳しく見ていきます。

会計基準と国際会計基準(IFRS)

タイの会計基準は、主にタイ国内基準と国際会計基準(IFRS)に基づいています。タイ国内基準は、タイ国内の法的要件や経済的状況を考慮して制定されており、企業はこれに準拠して財務報告を行います。一方、多国籍企業や上場企業は、国際会計基準(IFRS)にも対応する必要があるケースも多々あります。これにより、国際的な財務報告基準に従いつつ、タイの法的要件も遵守することが求められます。

監査制度と公認会計士(CPA)

タイの監査制度では、公認会計士(Certified Public Accountant, CPA)が監査を行います。監査は、企業の財務諸表が正確で信頼性があり、法的要件に適合していることを確認するために行われます。監査報告書は、企業の株主や投資家に対して財務情報の信頼性を示す重要な文書です。またタイでは基本的にすべての企業が毎年の会計監査を義務付けられています。

税務申告と法的要件

タイで事業を行う企業は、定期的に税務申告を行う義務があります。これには、所得税や付加価値税(VAT)などが含まれます。正確でタイムリーな申告と書類の提出は、企業の信頼性を保つために極めて重要です。また、タイの税法や規制は定期的に変更されるため、最新の情報を把握することが必要です。

会計経理担当者の役割とスキル

タイでの会計経理担当者は、タイの会計基準や税法に精通していることが求められます。また、国際的な財務報告基準にも対応できるスキルが必要です。地域特有の文化やビジネス環境を理解し、円滑な業務遂行を図るために、コミュニケーション能力も重要です。

会計・監査制度の課題と解決策

タイの会計・監査制度には、多様な課題が存在します。例えば、地域特有の文化的な違いやビジネス環境の理解不足が、タイに進出する外国企業にとっての障壁となることがあります。また、データセキュリティや情報漏洩のリスクも懸念されます。そうした背景から、会計記帳、税務申告、監査対応などのため、信頼性が高い会計システムの導入が欠かせません。グローバルクラウドERPのmultibookはタイの会計・税務・監査に対応しています。またタイ歳入局の認可をいただいております。

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タイの会計を知る上で押さえておきたい基本

タイの会計基準:TFRS for PAEs と TFRS for NPAEs 

タイでは、主に以下の2つの会計基準が適用されています:

  • TFRS for PAEs (Publicly Accountable Entities): 公的市場で取引される企業向けの会計基準です。証券取引所に上場している企業や公的に説明責任がある企業に適用されます。
    このTFRS for PAEsの元では財政状態計算書、包括利益計算書、持分変動計算書、キャッシュフロー計算書、財務諸表の注記の開示などが求められます。

  • TFRS for NPAEs (Non-Publicly Accountable Entities): 公的説明責任のない企業向けの会計基準です。非上場企業や小規模企業が採用しています。多くの在タイ日系企業もこの基準を採用しています。
    こちらのTFRS for NPAEsの元では、財政状態計算書、損益計算書、持分変動計算書、財務諸表の注記などの開示が求められます。

※参考:EY新日本有限責任監査法人ジャパンビジネスサービス「2021年タイの会計、監査、税務ガイド 

タイの監査制度 

タイでは、すべての企業に対して年次の会計監査が義務付けられています。年次監査は 公認会計士(Certified Public Accountant, CPA)によって行われます。監査からの指摘事項があった場合は財務諸表の訂正を行いますが、多くの企業では監査に時間がかかり、この訂正は前年度の計上分の訂正・調整になります。まずは月次決算の段階で毎月チェックし正しい計上をしておくこと、および年次決算時に前年度の訂正が安全にできる会計システムを利用することが肝要です。

監査済の年次決算をもとに課税所得を確定し法人所得税の申告をおこないます。また、監査報告書は、企業の株主総会で承認された後、タイ商務省に提出されます。なお提出後、財務情報はタイ商務省のDB(DBD Data Warehouse)で公開されます。このDBにより取引先や投資先の財務情報を簡単に調べることができます。

タイ会計経理担当者の条件 

タイの会計法では、以下の条件で会計経理担当者を設置することが求められます:

  • 会計記録責任者:
    • 資格要件: CPD(Continuing Professional Development)ライセンスを持つ必要があります。

    • 責任範囲: 会計記録責任者は企業の全般的な会計記録に責任を持ちます。これには、財務諸表の準備、日常の記録の管理、法的要件の遵守などが含まれます。

  • 会計記録担当者:
    • 資格要件: 会計学の教育を受けた者が選ばれます。一般に、会計学の学位や関連する資格を有することが求められます。

    • 業務内容: 具体的な会計業務を担当します。これには、日々の取引の記録入力、仕訳の処理、勘定科目の調整、月次や年次の会計処理などが含まれます。

これらの要件は、タイの企業が法的要件を遵守し、会計の正確性と透明性を確保するための基本的な措置となっています。会計記録責任者と会計記録担当者の役割分担により、企業は効果的な会計管理を実現し、内外のステークホルダーに対して信頼性のある情報提供を行います。

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タイ進出企業がよく抱える課題

海外での事業展開には文化、法要件、商習慣などの違いからくる課題がつきものです。ここではタイ進出企業がよく抱える課題をご紹介します。

複雑な税制と規制

タイの税制は複雑であり、企業が適切に法的要件に準拠するためには、専門知識と正確な申告が求められます。特に外国法人にとっては、地域特有の税法や規制に対応することが課題となります。

  • 法人所得税: タイの法人所得税率は通常、20%ですが、特定の条件下では少ない税率が適用されることもあります。この法人所得税の確定申告を事業年度末の決算日から150日以内に行います。また半期のタイミングで当事業年度の課税所得の見込にて「中間申告」が義務付けられています。この中間申告に対して期末の確定申告との乖離が大きい場合に不足税額および追加徴収があるため、慎重な見積が必要になります。

  • 源泉税:通常タイ国内取引ではサービス料や配当・利子を支払する際に数%の源泉所得税を控除した上で申告納税をする必要があります。また日系企業が日本の親会社に支払する場合など、国外企業への支払時にも発生しますが国内取引とは税率と申告方法が異なります。このように源泉税率や申告方法はその対象や条件によって異なってくるため、ケースに応じて適切な対応を行うことが求められます。

  • 付加価値税(VAT): タイ国内で販売される物品や、提供されるサービス、またそれらを輸入する際に課税されます。標準税率は7%ですが、輸出のケースや一部の商品・サービスでは0%税率が適用されます。取引の際には公式なInvoiceおよびTax Invoiceを発行し納税の証憑とします。公式なInvoiceおよびTax Invoiceは、納税者のTAX ID(納税者番号)やVAT金額を記載するなど、歳入局の規定に従って作成される必要があります。VATは日本の消費税と同じように最終消費者が負担します。企業は売上VAT(受け取ったVAT)から仕入VAT(支払ったVAT)を控除した差額を歳入局へ納税します。毎月申告・納税する義務がありその期限は翌月15日となっています。(注:申告期限は条件により複数あります)

人材の確保と育成の課題

高度な専門知識を持つ会計人材の確保と育成が課題となります。CPD(Continuing Professional Development)保持者や経理経験者は専門教育を受けた専門家であり限られています。都市のバンコクから離れ、日系企業の工場が多い地方などでは、さらに求職者が少ないと聞きます。またタイには終身雇用文化がなくジョブホップが盛んです。優秀なスタッフほどよりよい待遇を求めて辞めていきます。

  • 評価制度や育成体制の強化:優秀なスタッフが成長を実感できる育成プログラムと評価制度を導入することで、より定着を図ることができます。

  • 業務標準化:会計/ERPシステムの導入により業務を標準化し、業務の属人化を排除およびデータ継続性を担保することで、スタッフの交代にもスムーズに対応し安定した運用を継続することができます。

  • アウトソースの活用:経理業務のアウトソースを活用し人材リスクを回避することができます。その際、クラウド型システムを基盤にすることで、データの受け渡しやレポーティング時の手間を減らし正確性を高めることも可能になります。

現地の会計ソフト利用の落とし穴

会計ソフトに関しては、監査や税務調査で必要となる取引データや証憑の記録・保管・閲覧のため、信頼性・透明性が高いシステムが求められます。タイの会計・税務要件に対応するため、また現地タイ人スタッフが使い慣れているという背景からタイのローカル会計ソフトを使う企業も多いようですが、日系企業のタイ現地法人の日本人管理者や日本本社の立場からすると以下のように課題になる点も多くあります。

  • 多言語対応: タイのローカル会計ソフトの場合、使用できる言語はタイ語と英語であることがほとんどです。タイローカルスタッフはタイ語での運用が中心となるため、日本人管理者や本社が会計伝票の摘要欄などを確認したい場合は日本語または英語に翻訳する必要があります。

  • 外貨建管理: タイバーツでの金額のみ保持しているため、取引通貨での金額は把握できません。

  • 内部統制:タイのローカル会計ソフトでは転記済みの仕訳を上書き修正が可能であったり、タイ語のみで運用されるので、現地拠点に日本人マネージャーがいたとしても、内容がブラックボックス化しやすく、架空取引や、不正取引が行われても、判明できないリスクが高かったりと、内部統制の面で不安があります。

  • グループ経営管理:オンプレミスで利用されるケースが多く、その場合日本本社からのリアルタイムな現地の業績把握や見える化はできません。また、本社で管理するグループ管理会計用や連結決算用の勘定体系による財務諸表照会、連結決算システムへの連携機能もない場合が多いです。

  • Excel入出力:日本本社が求めるレポート機能が十分になく、Excel出力機能も無いケースがあるため、経営管理用の資料作成は、手間をかけてシステム外の情報やExcelを駆使して作成する必要があります。

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データセキュリティと情報漏洩のリスク

クラウド型システムの導入やデジタル化が進む中で、データセキュリティの確保と情報漏洩のリスクが増大しています。特に、個人情報や会社機密の保護が重要視される状況です。

  • データ保護法と規制: タイでは、個人情報保護法(PDPA)が導入され、個人データの保護と適切な取り扱いが求められます。法的要件を遵守するために、データの収集、処理、保存に関する詳細なガイドラインが存在します。

  • セキュリティ対策: クラウドベースのシステムを導入する際、データの暗号化、アクセス制御、定期的なセキュリティ監査が重要です。

コミュニケーションの課題

上述のとおりタイの税制は複雑なため、適正な納税をおこなうためにはケースバイケースで確認と判断が求められます。このケースは経費計上し課税所得控除の対象になるか。このケースは源泉税の税率は何%か。移転価格税制の基準に対して問題はないか。などです。また特にグレーなケースでは歳入局や監査人と確認して慎重に進める必要があるほか、税務調査等に備えて合理的な説明内容を準備する必要があるでしょう。

これに対応するには、タイの会計・税制のルールはもちろん、文化・慣習による実務上の基準も理解した上で、自社のビジネスに即した判断が求められます。駐在員、本社管理部門、現地経理スタッフ、監査法人にはそれぞれの専門領域がありお互いに任せっきりになりがちですが、コミュニケーションと擦り合わせができる体制構築が求められます。

日本本社とタイ現地スタッフとのコミュニケーションにおける言語や文化の壁はプロジェクトの進行や課題解決の効率性に影響を与えることがあるため、スタッフ同士のコミュニケーション強化はもちろんのこと、各種ツールの活用がおすすめです。

  • プロジェクト管理ツールの活用: タイの現地スタッフとの効果的なコミュニケーションを図るために、プロジェクト管理ツールの活用が有効です。タスク管理、進捗状況の共有、コミュニケーションログの記録を効率化し、プロジェクトの透明性と効率性を向上させます。

  • 言語の壁を乗り越える: 日本本社とのコミュニケーションにおいては、タイ語と英語の両方を使用することが推奨されます。タイの現地スタッフが英語を話すことができない場合でも、多言語対応の会計システムや翻訳サービスを通じて、コミュニケーションを円滑に進めることが可能です。

  • データの共有:コミュニケーションにあたってはデータ共有が重要です。タイの現地スタッフや監査人と討議する場合でも、元となる証憑や財務諸表を確認できていてはじめて難しい課題を理解し正しい判断ができます。クラウド対応、多言語対応のシステムでデータ共有ができれば、当事者全員が同じデータを見ながら同じ俎上で円滑にコミュニケーションすることができます。

これらの課題を理解し、適切なソリューションを導入することが、タイでのビジネス運営の成功に不可欠です。特に、地域特有の法的要件や文化的な違いに対応するために、事前の準備と専門知識の活用が重要です。

タイ進出の日系企業におすすめ グローバルクラウドERPmultibookとは?

ここまで、タイの会計・監査制度やタイに進出する日系企業がよく抱える課題を見てきましたが、最後に弊社株式会社マルチブックが提供するグローバルクラウドERP multiookについてご紹介させてください。

マルチブックは「海外経営への挑戦をもっと身近に、もっと簡単に」をミッションに、ダイナミックに変化する海外ビジネスをテクノロジーで強力にサポートし、国境を越えてデータに基づいて人々を繋げることにコミットしています。グローバルクラウドERP multibookはタイ語を含む12言語、複数帳簿に対応し、外貨建残高管理をはじめ本格的な会計機能だけでなく、モノの動きと会計仕訳を連動させたロジスティクス機能、日割償却など国要件に対応した固定資産機能、IFRSでの連結決算に対応したリース資産管理機能、海外拠点で利用する立替経費精算機能、連結会計ソフトへの連携機能、グローバル全拠点の業績を把握するマネジメントコックピット機能、VAT申告書、源泉徴収税申告書、Invoice出力など、各国会計、税務、商習慣に対応した機能を実現しています。もちろん、各機能単体でのご利用も可能です。

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  • タイの会計・税務要件に対応: VAT(付加価値税)や源泉徴収税をはじめとするタイ固有の要件にも対応しています。詳細はこちらから>>

  • 多言語対応: タイ語を含む12ヶ国語に対応しているため。タイのローカルスタッフは現地語で、日本本社や日本人管理者は日本語で日々の入力情報を確認することが可能です。

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おわりに

この記事では、タイの会計・監査制度の基本から、タイ進出の日系企業がよく抱える課題についてお伝えしてきました。弊社株式会社マルチブックは、タイにおけるビジネス運営の際に重要な法的要件の遵守から、内部統制の強化、グループ経営の効率化まで、幅広いサポートを提供していますので、タイの子会社管理で課題をお持ちの方は是非multibookをご検討ください。multibookについて気になる点のご相談や、実機を用いたデモンストレーションをご希望の方は、是非お気軽にお気軽にお問い合わせください

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海外拠点の会計システムの重要性と選び方

※参考
・新日本有限責任監査法人 タイ国の会計・税務・法務Q&A、海外進出の実務シリーズ 平成27年

第 6 章 会計制度と監査制度 -Deloitte 2020

JETROバンコクセンター編「民商法典 2」

この記事を書いた人

マルチブック編集部

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