世界各国の給与計算基礎知識〜フィリピン編〜

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記事更新日:2024/03/21

世界各国の給与計算基礎知識〜フィリピン編〜

最終更新日2024年3月29日

フィリピンの給与計算について

フィリピンは、経済成長が顕著で市場拡大の可能性が高く、日本企業にとって魅力的な投資先です。若い労働力が豊富で、教育レベルが高く、労働コストが比較的低いこと、多くが英語を話すためコミュニケーションが容易であること、そしてアジア太平洋地域の中心に位置する地理的利点により、物流や貿易に有利です。一方で、フィリピンの労働法と税法は日本のものとは大きく異なります。この記事では、フィリピンにおける給与計算の仕組みや、給与から控除される各種の負担金について詳しく解説します。

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フィリピンの給与計算の基本

  • 雇用契約について:
    フィリピンでは、正式な雇用関係を確立するために、雇用契約が必要です。この契約には、職務内容、給与、勤務時間、福利厚生、契約期間などの詳細が含まれます。契約は口頭または書面で締結することができ、書面の契約は双方の権利と責任を明確にします。

  • 給与計算の主要な構成要素:
    1 賃金構造:フィリピンでは、基本給、手当、ボーナスで構成されることが一般的です。基本給は従業員が受け取る固定額で、手当やボーナスは会社の方針、従業員のパフォーマンス、特定の合意によって異なります。

    2 残業代:原則、定期的な8時間労働日または48時間労働週を超えて働いた時間に対しては、従業員は残業代を受け取る権利があります。通常、普通の日には通常の時給の125%、休日や特別非労働日には130%、通常の祝日には200%に増加します。

    3 夜間勤務手当:夜10時から朝6時までの間に勤務する労働者は、通常の時給に加えて夜間勤務手当(通常は10%増し)を受け取る権利があります。

    4 最低賃金:フィリピンの最低賃金は地域や業種によって異なり、労働雇用省(DOLE)が定期的にこれらの率を更新します。

    5 13か月目の給与:フィリピンでは義務付けられており、1ヶ月の給与に相当する額を、毎年12月24日までに支払う必要があります。

    6 従業員福利厚生:健康給付、食事手当、交通手当など、雇用者が提供するその他の特典が含まれます。

    7 記録保持:雇用者は、労働時間、賃金、控除、貢献に関する詳細な給与記録を法律で指定された期間保持する必要があります。

  • 法定控除:
    SSS、PhilHealth、Pag-IBIG:給与からは、社会保障制度(SSS)、健康保険(PhilHealth)、住宅開発基金(Pag-IBIG)への拠出が控除されます。これらの控除は、従業員と雇用主双方の貢献に基づいており、従業員の福利厚生と将来の保障に寄与します。BIRによる所得税の計算も、給与計算の重要な部分です。フィリピンでは、所得に応じて累進課税が適用され、年収と控除可能な費用に基づいて税額が決定されます。

  • 給与計算プロセス:
    給与支払い周期:フィリピンでは通常、給与計算の頻度は月1回ですが、企業によっては半月ごとまたは週単位で支払うこともあります。
    給与計算システム:多くの企業は給与計算を効率化し、精度を確保し、規制要件に準拠するためにソフトウェアを使用するか、給与計算サービスを外部委託しています。

  • コンプライアンスと報告:
    雇用者は、それぞれの政府機関(BIR、SSS、PhilHealth、Pag-IBIG)に定期的に報告し、控除額を納付する必要があります。年末には、従業員の給与から差し引かれた税金と実際の税負担を調整するための調整が必要です。

フィリピンの給与計算に関わる主要な政府機関

1 フィリピン国税庁(Bureau of Internal Revenue, BIR)

  • 概要: BIRは、フィリピンの内国歳入を管理する主要な政府機関です。この機関は、税金の徴収、税務評価、税務遵守の確保を担っています。個人および企業に関するあらゆる種類の税金(所得税、付加価値税、消費税など)の徴収を管理しています。
  • 役割: 税法の実施、税収の最大化、税務遵守の促進、税務関連サービスの提供が主な役割です。また、税制の改正提案に関して政府に助言を行うこともあります。

2 社会保険機構(Social Security System, SSS)

  • 概要: SSSは、民間部門の労働者に対する社会保障の提供を目的とした政府機関です。老後、障害、死亡、病気、傷害など、様々なケースでの経済的支援を提供しています。
  • 役割: 従業員と雇用主からの拠出に基づき、退職年金、障害給付、死亡給付、病気給付などの社会保障プログラムを提供します。SSSは、労働者が就労生活を通じて経済的な安定を得られるよう支援します。

3 健康保険機構(PhilHealth)

  • 概要: PhilHealthは、フィリピンの国民健康保険プログラムを管理する政府機関です。全てのフィリピン人に対し、手頃な価格の医療サービスへのアクセスを提供することを目的としています。
  • 役割: PhilHealthは、病院やクリニックでの治療費の一部を補助することで、医療費の負担を軽減します。加入者は、病気や怪我の治療に必要な医療サービスを受ける際に、PhilHealthの給付を利用できます。

4 住宅貯蓄のための相互扶助制度(Pag-IBIG Fund)

  • 概要: Pag-IBIG Fundは、労働者が手頃な住宅を手に入れるための貯蓄と住宅ローンの支援を提供する政府機関です。正式にはHome Development Mutual Fundと呼ばれます。
  • 役割: 会員は、住宅ローン、貯蓄、および他の住宅関連の財政支援を受ける資格を得ます。Pag-IBIGはまた、短期ローンや災害時の財政支援など、他の福利厚生も提供しています。

これらの機関は、フィリピンの労働者が経済的な安全と健康を保ちながら、将来に向けて準備をするための支援を提供します。それぞれがカバーする範囲は異なりますが、全てが国民の福祉と生活の質の向上に貢献しています。

フィリピンの給与計算プロセスは複雑であり、企業は従業員ごとに正確な計算を保証するために、適切な給与計算ソフトウェアやプロフェッショナルなアドバイスを利用することが推奨されます。また、フィリピンの税務や雇用に関する法律は変更される可能性があるため、最新の情報に常に注意を払うことが重要です。マルチブックが提供するシステムが一体となった給与計算サービスを実現する海外クラウド人事部では、常に最新のフィリピン要件に準拠した給与計算BPOサービスを提供しています。

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まとめ

フィリピンでの給与計算は、フィリピン国税庁(BIR)やその他の政府機関の規則に従う必要があります。この記事が、フィリピンでの給与計算の基本的な理解を深めるのに役立つことを願っています。正確な給与計算は、従業員の満足度を高め、法的な問題を避けるために不可欠です。給与計算のプロセスに関して不明な点がある場合は、税務アドバイザーや人事コンサルタント・海外クラウド人事部などの給与計算プロバイダーに相談することをお勧めします。

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この記事を書いた人

吉崎 萌

大手外資系メーカーの営業部門にて、国内最大級の小売店グループ会社の法人営業を担当。データに基づき購買者理解に合わせた戦略提案を行う。マルチブックのミッションに共感し2021年より広報として入社。2023年から日本で唯一のDeel代理店事業におけるプロジェクトリーダーに就任。営業、マーケティング、PR、事業開発等に従事。

この記事を書いた人

渡部 学

日系半導体商社にて経理、IT、シェアードサービス、海外業務統括、総務の責任者を経て、香港現地のM&Aに伴う買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィック全域の財務統括を担う。帰国後は外資系医療機器製造業の日本法人におけるCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。2019年株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。

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