日本拠点のリース資産に関するIFRS修正仕訳作業時間を50%削減!
さらに属人化も解消
[写真左より]株式会社 Food Innovators Japan 経理部 主任 K氏、ファイナンシャルコントローラー S氏、経理部 H氏
日本と世界を飲食で繋ぐことをめざす株式会社Food Innovators Japan(以下、FIJ)は、シンガポールに本社を置く飲食業界のイノベーターです。同社の親会社であるシンガポール法人のFood Innovators Holdings Limited(以下、FIH)は、2024年10月にシンガポール証券取引所(SGX)に上場しました(証券コード KYB)。実質的な本社機能は日本支社であるFIJが担っています。
FIHはシンガポール証券取引所への上場を視野に入れたことで、リース会計処理をIFRSに則って行うことが求められました。特にFIJでは、主力事業であるサブリース事業において、多数の飲食店舗物件をリースしており、決算期には複雑な修正仕訳が必要でした。
リース資産はExcelで管理されており、複雑な計算処理が必要なため、決算期のIFRS修正仕訳作成に約40時間を要していました。さらに、この処理は特定の担当者に依存しており、ミスのリスクが増大していました。そこで、FIJはmultibook IFRS16号リース資産管理を導入し、作業時間を約20時間に短縮しました。これにより、作業の効率化が進むとともに、修正仕訳作成の属人化も解消されました。さらに、レポート作成などの監査対応業務の時間短縮と効率化も進みました。
導入前の課題
- 煩雑なIFRS修正仕訳をExcelで対応していたため、問題が発生しても迅速に対処するのが難しかった。
- リース資産管理の内製化を進めたが、ExcelでのIFRS修正仕訳作成は複雑な計算が必要で、決算期に40時間を要していた。
- Excel管理のため作業が属人化し、担当者に依存していた。
- 監査法人が、Excelワークシートを理解するのに時間を要していた。
multibookを選んだ理由
- 迅速に導入でき、すぐに使い始めることができる。
- IFRS16号に対応した機能が網羅されており、必要なレポートもすぐ出せる。
- 画面が見やすく、使いやすそうだと直感的に感じた。
導入後の効果
- 決算期に発生するIFRS修正仕訳にかかる作業時間が40時間から20時間に半減した。
- 修正仕訳作業の属人化が解消され、会計知識があれば誰でもIFRS修正仕訳を扱えるようになった。
- 監査対応業務の時間短縮と効率化が進んだ。
本社をシンガポールに置く飲食事業イノベーター
―― 事業内容をご紹介ください。
S氏:FIJは、日本と世界を飲食で繋ぎ、世界中に「美味しい」がある場所を拓いていこうとしている飲食事業グループです。なかでも世界で注目を集めている日本食を世界に広めたいと考えており、日本食需要の高いシンガポールに本社を置いてビジネスを展開しています。
大きく2つの事業柱があります。1つは自社運営レストラン事業です。店舗数は、シンガポール10店、マレーシア5店、日本は直営店6店、運営委託店6店と全部で27店です。もう1つが店舗物件のサブリース事業です。これは、首都圏の商業地を中心に大家さま所有の物件を私たちがひとまずリースし、それを飲食店運営者の方々に再リースするというものです。リスクは間に入る私たちが取るため、大家さまは安定的にリース収益を上げることができ、飲食店運営者の方々は店舗を賃借しやすくなるという双方にメリットがあります。現在、当社がサブリースを行っている店舗は200店を超えます。
シンガポールで上場を目指し、IFRSリース資産管理にmultibookを採用
――今回、multibook IFRS16号リース資産管理を導入いただきましたが、以前はどのような課題がありましたか。
S氏:課題があったのはサブリース事業です。当社はシンガポールでの株式上場をめざすべく、会計基準に国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)を採用しました。IFRSでは、私たちが大家さまから借りている物件は、使用権資産としてバランスシートに乗せなければなりません。それも将来の賃料を現在価値に割り引くといった複雑な計算が必要です。一方で日本国内は日本会計基準で管理を行っているため、決算期にIFRS修正仕訳が必要でした。約200店舗分のリース資産管理の作業を、従来は外注してExcelで処理していました。
しかし、私が当社に合流した2年前に内製化へ舵を切りました。外注に頼っていたのでは、当社内にノウハウが蓄積できず、何かあったときに迅速に対応できないからです。ただ、いざ内製化してみると、このIFRS修正仕訳は非常に大変で、ただでさえ多忙な決算期に40時間も作業時間がかかりかなり負担になっていました。また、複雑な関数を用いたExcel処理はどうしても属人化してしまいます。そこで、なにかいいツールはないかと思って探し始めました。
―― どのようにmultibookを知っていただいたのでしょうか。
S氏:インターネットで検索をして見つけました。当社にとって重要だったのは、さきほどいった将来賃料の割引現在価値ですとか、資産計上額、負債計上額の表示、毎月のリース料支払いで発生する減価償却費や支払い利息の把握です。また、このような情報がすぐレポートとして出せるのもよく、IFRS16号の対応に必要な機能をmultibookは網羅していました。
―― 他の製品/サービスも検討されましたか。
S氏:しておりません。当社は2月決算のため2023年の春ごろからツールを探しており、2024年2月期の決算には使い始めていたかったことと、マルチブックの担当者から話を聞いたときに見たデモでも画面が見やすく、使いやすそうだったため、すぐにmultibookの導入を決めました。
―― 2023年5月からの導入はどのように進められましたか。
S氏:導入は2段階で進めました。まず、2023年8月を目標に、2023年2月までの情報をデータ移行しました。今まで管理に使用していたExcelをmultibookに渡すと、multibookのカスタマーサクセスチームが、中身を読み解いた上でデータを投入してくれました。データの整合性を検証する中で従来の計算と合わない部分が出てきたら調査するのですが、どう合わないのか一緒になって検証してくれるのが助かりました。サポートが丁寧で、操作や理屈を丁寧にオンラインの打ち合わせで何度か説明してくれて、そこは非常にありがたかったです。
この段階で移行元の情報とmultibookに投入した情報の一致が確認できたので、これを期首残としmultibookを正規の帳簿として運用し始めました。その後、1年分のリースの増減の情報を更新し、それ以降Excelでの運用はなくなりました。
決算期作業時間が20時間に半減、さらなる時間短縮も可能
―― 現在の活用状況はいかがでしょうか。
S氏:当初の予定どおり、2024年2月期の決算期にmultibookでIFRS修正仕訳を実施することができました。
―― 現時点でどのような導入効果を実感されていますか。
S氏:リース情報を正しく入力していれば、複雑な計算の必要なIFRS修正仕訳作業はmultibookで行ってくれるため、決算期に約40時間かかっていた作業が約20時間と半減しました。ただ、今後さらなる時間短縮も可能だと思っています。以前のExcel運用時の名残で、年度締めが終わった後に1年分のリース物件の増減や契約更新などの情報を更新しており、決算期の作業にはまだ時間がかかっています。これらの情報を毎月、都度multibookに入力するフローに改善できれば決算期にIFRS修正仕訳にかかる時間はもっと短縮できると思うので、今後そのように変えていければと思っています。
また、計算作業の属人化も解消されました。今は私を含めて2名でIFRS修正仕訳を担当していますが、会計知識があれば誰でもこれを扱えるようになる下地が整いました。新しく担当してもらう人にはIFRS修正仕訳の仕組みを理解した上で、multibookの操作に加わってもらえればと思っています。
―― 2024年10月にシンガポール証券取引所に上場されました。おめでとうございます。この一環で、multibookが何か貢献できた部分はありましたか。
S氏:上場の審査そのものではありませんが、multibookを導入したことで、監査対応業務が楽になりました。シンガポールの監査メンバーや、日本の監査法人に提出するレポートをmultibookから出力できるようになり監査対応時間の短縮と効率化に非常に役立ちました。
―― 今後の展望を伺わせてください。
S氏:まずは、毎月その都度データを入力して決算期の作業時間をさらに短縮するというのが直近の目標です。
また日本では、2024年9月13日に「リースに関する会計基準」、いわゆる新リース会計基準の草案が公開され、ほとんどのリース資産をバランスシート上で認識することが明らかになっています。サブリース事業を展開する当社としては、今後の動向を注視していきたいところです。
[取材に対応いただいた方]
株式会社 Food Innovators Japan ファイナンシャルコントローラー S氏
株式会社 Food Innovators Japan 経理部 主任 K氏
株式会社 Food Innovators Japan 経理部 H氏